YouTubeもネトフリも好きなように観ればいいじゃない

「映画を早送りで観る人たち」の出現が示す、恐ろしい未来

上記記事を読みました。

内容をざっくり書くと「映像作品を倍速再生したり10秒スキップしたりしてる人がいるらしいけど大丈夫なんか?制作者の意図伝わるんか?」的な内容ですが、まぁ個人的には「ほーん」って感じでした。がいくつか私の意見を書いてみます。

私はNetflixは利用していませんが、YouTubeは毎日観ています。dアニメストアやAmazon Prime Videoでアニメ作品もよく見ています。あまり倍速機能は使いませんが全く使わない訳ではないです。動画の進み方や人の話し方にもよりますが、1.25倍速や1.5倍速くらいにした方が却って視聴しやすいような動画もあるでしょう。私は臨機応変に使っています。アニメは再生速度を変えたりはしませんが、作品によってはOPをスキップしたりすることはあります。

こういう言い方をしたらちょっと悪いですが、でもおそらく事実なので書きますが、たとえばアニメを見る人の多くにとってはOP映像はメインではなくて、あくまで本編がメインになるでしょう。OPも最初の数話は見るかもしれませんが、特に変わり映えのない映像なのでスキップしてしまうことも多いのではないでしょうか。もちろん人によっては「OPを観るのと観ないのとじゃ作品への浸り方が違うんだよ!!」みたいな人もいるかもしれませんし、それはその人にとってはそうなのでしょう。そういう人もいるし、そうではない人もいるというだけの話です。OPを飛ばす人はまぁ時間がもったいないからというのもありますが、単純に退屈だからスキップするというような人が多いのではないでしょうか。

そして倍速にしろ10秒スキップにしろ、その機能に需要があるから実装されているのでしょう。特にdアニメストアなんか10秒スキップ、10秒巻き戻し、30秒スキップ、30秒巻き戻しに加えて、アバンがない作品に限りますがOP自動スキップの機能までありますからね。OPスキップなんて、作品ごと個別にスキップする時間を設定しているでしょうから1、これは大変な手間です。そんなに手間なことをなんでやっているかというと、やはり需要があるからというのに尽きると思いますね。視聴者にとってメインではない部分ですから、たとえば男女が出演するビデオでインタビュー部分を飛ばしたりするという人もいることでしょう。よく知りませんが、なんかチャプターでいきなりそういうシーンから見れるものもあるそうですね。まぁそっちの次元はあまり詳しくはないのですが…。これも一緒で、結局そういう需要を元にその機能が作られていて、その機能を使う人がいるというだけだと思います。

それをば、なんですかこれは。

それを「飛ばす」「倍速で観る」だなんて。たとえるなら、『第九』や『天城越え』や『マリーゴールド』を、倍速で聴いたり、サビ以外を飛ばして聴くようなものだ。そんな聴き方で叙情や滋味を堪能できるのだろうか。あえて感情的に言うなら、それはアーティストへの冒涜ではないのか。

いや、全然冒涜じゃないでしょう。こちらから能動的に視聴しに行っていて冒涜な訳がないでしょう。

たとえば私はB’zの「LOVE PHANTOM」が聴きたくなることが4日に1回ほどありますが、別にイントロを最初から聴いたりはしませんよ。なんならギターソロの部分とかが好きなのに、1分以上もある冒頭のイントロを毎度毎度聴いたりはしません。せいぜい冒頭の「You must know what I am…」の語りの部分くらいまではスキップします。そりゃたまにはストリングスの綺麗なイントロも聴こうかな~って思ったりはしますが、毎回聴いている訳ではないです。で、なんでそれがアーティストへの冒涜になるんでしょうか?好きで聴いてるのに冒涜な訳ないじゃないですか。もちろん最初から最後まで聴いたら壮大な曲だね、感動するねってなるかもしれませんが、何百回も聴いたような楽曲で特定の部分が好きなのに、途中でスキップしたから冒涜って…。ライターさんならもうちょっと言葉を選んでいただきたい。

いやまぁ、第九は歓喜の歌しか知らないのでちょっとなんとも言えませんが、でもそれをアーティストへの冒涜というなら小学校の音楽教育なんて全編アーティストへの冒涜だらけじゃないですか。本気でそう思っていらっしゃるのでしょうか。この人は一度も好きな曲のイントロをスキップしたりしたことがないのでしょうな。

ただ、私は記事にあるようなケースと違って会話がないシーンだから飛ばす、といった使い方はしていません。記事で言わんとしているように、風景描写とか登場人物の微妙な機微が必ずしもセリフで表現されている訳ではないと思うからです。例えば「千と千尋の神隠し」終盤の、千と白が手を離した時に白の手がずっと残っているシーンなんかですね。ただ、私や筆者さんが「別にスキップしない派」であるという理由で、「スキップする派」をアーティストへの冒涜とか言うのは「オイオイオイそれは別に違うでしょ」とは思います。

あとはなんだろ。

その飛ばした「10秒」の中に、ストーリー上重要な伏線になるカットが一瞬だけ挟まれていないと、なぜ観る前から断言できるのだろう。彼らはエスパーなのか。

とありますが、別に必ずしも初見の作品を10秒スキップしている訳ではないと思いますよ。少なくとも私はそうですよ。何回も視聴した作品でもうすぐ好きなシーンがある、だから10秒スキップするというのはあると思います。初見でスキップしている人ばかりと決めつけているのだとしたら(「エスパーなのか」という言葉からそういう思想が読み取れます)もうちょっと色々想像されたら良いと思います。

思うにこの筆者の方は、自分には使い方の分からないような機能が増えてしまって困惑しており、なんとかその不安を晴らすためにこのような記事を書かれたのではないかと推察します。違ってたらすみませんが、文章を読む感じだとそういう印象を受けます。個人的にはおそらく筆者さんと同じく、セリフでアレコレ説明するような作品よりは、それ以外の描写で補完できるような作品の方が好きです。たとえば「リズと青い鳥」は本当によかったです。みぞれと希美の絶妙な言葉の交わし方もそうですが、足元の描写や構図など本当にすばらしかったです。ただ、だからといってセリフでアレコレ説明するような作品がダメだとか、それを見るような人たちがダメだとかは思いません。別にそういう人がいたっていいし、自分にはイマイチ使い方の分からない機能が実装されていたっていいじゃないですか。自分の周りに自分の理解できない物事が増えていくと不安になる気持ちは分かりますが、だからダメだというのではなくもうちょっと柔軟に考えたいですね。使える人は嬉しいし、使わない(使えない)人も困る訳じゃないんですから。


  1. おそらく。OPの長さはだいたいは同じでしょうけど、細かい調整は必要だと思います。まぁ手でやってるかは分かりませんが、何かしらのコストがかかっているとまでは言っていいと思います。