すっころんだチョコパンマン

先日ちょっと面白いことがあったので書いてみます。

仕事中に、ペットボトルを捨てるついでに食堂まで休憩に行っていました。弊社の食堂は私が仕事をしている階の2つ上にあり、階段をせこせこ上って向かう訳です。ぶっちゃけ遠いです。食堂自体は結構広く、飲食スペースの横に自販機スペースと、その周辺にゴミ箱(ペール)のスペースがあります。ゴミ箱も種類別に数個ずつあって、ずっらーーーと並んでいます。

通路も結構広く、数人が集まって立ち話をしていても往来の邪魔にならないくらいの幅があります。で、私は何気なくゴミ箱の横に立ち止まってスマートなフォーンを見ていたのです。全然スマートじゃないV60 ThinQというスマートなフォーンがあるのですが、それを見ておった訳です。別に長時間見ている訳でもなくすぐに立ち去ろうとしたのですが、ちょうどその時ある男性が向かってきていました。顔も名前も知らない人でした。

30半ばくらいでしょうか。服装に関しては「カジュアルすぎないこと」くらいが暗黙の了解の、比較的緩い職場なのでその人もかなりラフな恰好をしていました。どちらかといえばカジュアルすぎるくらいラフな恰好をしていらっしゃいました。すげーラフでした。どのくらいラフかって言うと、チョコパンを手に持って食べ歩きしていらっしゃいました。スーパーとかで安売りされているような丸いチョコパンでした。時間がちょうど15時前後くらいだったので昼食にしてはやや遅いという気もしますし、食堂まで来てるのに待ちきれずに途中で食べちゃうんだ、と色々なことが頭を巡りました。

チョコパンマンのあまりのインパクトに体感でしばらく、実際には2秒程度そのチョコパンマンを見ていたのですが、あまりじっと見続けるのも失礼だなと思い目を逸らそうとした瞬間事件は起きました。たまに何もないところで躓いておっとっと…ってなることあるじゃないですか。それが起こったんです。チョコパンマンに。

そしたら御仁、左手でチョコパンマンを持って、右手はズボンのポケットに突っ込んでいらっしゃったのであまりの突然の出来事に対応できなかったのでしょう。盛大によろけたあとすってんころりん。右手をポケットから出すも間に合わずに、左手の肘から着地してしまいました。倒れ込んでいるチョコパンマンはまるでスローモーションの映像のようにゆっくりと、何かを悟ったような、あるいは諦めたような表情でした。幸いなことに、頭を床に強打するという最悪の事態は免れました。チョコパンが見事なクッションとなっていたのです。床、チョコパン、顔面。まるでギャグマンガか何かのように、完全にチョコパンに顔面ダイブを決めておられました。

「大丈夫ですか!?」と駆け寄ります。彼は自力で起き上がれました。良かった。チョコパンマンが顔を上げます。すると、顔には白いクリームのようなものがべたりとくっついています。ちょうどパイ投げをされた後みたいな。そこまでクリームの量は多くありませんし、鼻から下だけでしたが、イメージとしてはパイ投げです。チョコとクリームのパンだったんですね。美味しそうです。

笑ってはいけないと思いつつも、コケる前のややキザっぽい振舞いとコケたあとのパイ投げみたいな顔の対比があまりにもギャグとして完成度が高かったものですから、思わずニヤけてしまいました。マスクをしていて本当に良かった。状況的にも人としても笑ってはいけないんですけど、そういう理性を飛び越えて本能的に笑わせに来ているのでこれはもう仕方がありません。

「肘大丈夫ですか?ケガは…」と尋ねると「あー、だいじょーっす、さーせん」と答えてくれました。一部始終を見ていた清掃のおばちゃんが、布巾と雑巾を持って駆け寄って来ました。「大丈夫?痛かったでしょ?」とおばちゃんが尋ねると、チョコパンマンは恥ずかしいのかバツが悪そうに曖昧に返事をしていました。いや、他人の不幸を笑うのは本当に趣味が悪いのですが、あまりにも衝撃的でした。

皆さんに於かれましては、パンは食堂に着くまで我慢するというのと、ポケットに手を入れたまま歩かないということをご留意ください。