【夢日記】戦後の警察

舞台は戦後2~3年くらいの日本で、私は警察で働いていた。元軍医で背の高い男と、その男より年上だが腰の低い、やや太った男のペアを補佐するような立場だった。そのペアが立てこもりの現場に行くというので、私もついていくことになった。

この事件は一年近く前に発生したが、今もその対応が続いている。現場は西洋風の住宅で、2階部分に犯人が立てこもっている。その家には英国人の母子が二人で住んでいる。犯人はその家の息子だ。立てこもりといっても人質がいる訳ではなく、母親も普通に家を出入りしたり2階に食事を届けたりいている。立てこもりというより引きこもりだ。

なぜただの引きこもりに介入しているのかというと、犯人の男は精神疾患があるのかまともなコミュニケーションが取れていない上にライフルを所持しているからだ。月に一回程度我々の組織の人員が訪問して説得するということを繰り返している。どちらにせよコミュニケーションが取れないし徒労に終わることがほとんどだ。訪問する人員は毎回違うが皆外れくじのような仕事、あるいは暇つぶしだと思っている。対応する母親も慣れたもので、お茶を出したりしてもてなしている。しかし直接我々と息子を会話させることはせず、必ず間に立っているようだ。

いつもであれば1時間ほど説得を試みて帰るというだけの作業なのだが、今回は違った。数日前に路上で一般市民が狙撃されたのだ。どこから狙撃されたのか、被害者の身長や傷跡などから計算するとちょうどこの家の階が割り出された。今まで、この立てこもり犯は発砲はしていなかったが、念のため話を聞きにきたのだ。つまり、今回のペアは「立てこもりをやめるように説得する」のではなく「事情聴取をするため署に来るよう伝える」ことが目的だった。

犯人がライフルを所持しているため、念のため私も拳銃を持って外で待機することになった。ペアの警察官は丸腰で、いつも通り母親に話をしている。母親は「息子に話を聴いてきます」と言って2階に上がった。今回も直接話すことはできないようだ。直接話すどころか、我々はその男の顔すら見たことがなかった。

母親が戻ってくると、「ここから狙撃をした日本人の犯人は心当たりがない」と言った。「日本人の」という部分にアクセントを置いており、元軍医の男が顔をしかめた。言外に「我々英国人や米国人が何をしてもお前たちには裁けない」というのを込めた言い方だった。もちろん当時の法は犯人の国籍などは一切関係なく適切に裁かれるものだが、実態はそうなっていなかった。それを見透かしたような言い方だった。もう一人の男も浅くため息をつくと、二人揃って踵を返した。家を出ると元軍医の男は私に向かって、手を大きく掲げて横に振った。「帰るぞ」の合図だった。

男たちに合流した私は「どうでした?」と分かり切ったことを尋ねた。元軍医の男は「ダメだ」とだけ答えた。元軍医の男の顔を見ると意外と無表情で、腹は立っているもののある程度割り切っているような態度に見えた。

署に戻ると、そのタイミングで大きな地震が発生した。揺れに揺れ、窓ガラスがあちこちで割れけが人も大勢出ている。

(この辺りで私の視点は、補佐の男ではなく三人称視点になっている)

元軍医の男は「非常訓練通り対応しろ」とだけ言うと、すぐさま小太りの男と解散した。元軍医の男は大けがを負った者の応急処置を、小太りの男は怪我のない者や軽傷の者の避難を誘導している。幸い揺れはすぐおさまったが屋内はボロボロになっている。元軍医の男も応急処置中に、倒れてきた柱時計に脚を潰されてしまったようだ。まったく動けないでいる。

小太りの男が元軍医の男を救助しようとするも、元軍医の男が「お前は自分の義務を全うしろ!もうすぐこの建物が崩れるぞ!」と一喝した。小太りの男は小さく敬礼をした後、急いで建物の外へ出た。そのまま駅へ向かってまっすぐ走る。何かが崩れる音がしたが、決して振り返ることはなかった。

(この辺りで私の視点は、小太りの男になる。以下、私=「小太りの男」)

私は駅の構内をまっすぐに歩いた。いつの間にか現代になっている。しばらく歩くとフードコートが見えた。マクドナルド、吉野家、ミスドなどの店が営業している。ふと、ゲームのクエスト受注みたいなポップアップが出てきて「餃子の王将で一泊する」というミッションが出てきた。餃子の王将へ向かうと、店内の営業とは別に半径10mくらいの半円の弧の部分に10席くらいのカウンターが出ている。宿泊希望の客はこの席で受付をするらしい。

一蘭のオーダー用紙みたいな紙で受付をする。宿泊日数、朝食の有無、アレルギーの有無、にんにくあり/なし、など。私はその手続きは初めてだったが店員は「早くしろよ」的な、少しイライラした様子で私の方を見てきた。書き終わった受付用紙を提出すると、「おくすり手帳」とぶっきらぼうに言われた。「おくすり手帳は?持ってきてる?」と続けざまに問う店員。持ってきていないと返答すると、小さく舌打ちし「次回から持ってきてくださいね」と言われた。手続きが終わると、「MISSION CLEAR!!」というポップアップが出てきた。