Googleのネット広告制限強化でAdSenseはどうなるか
上記記事を読みました。
タイトルについて結論だけ先に書くと「短期的にはちょっと収益減るかも、長期的には多分今までとそんなに変わらない」と思います。
以下はそう思う理由と、技術的な解説があった方が面白いかなと思ったので、私の分かる範囲で書いていこうと思います。知識のない方にも分かりやすく書いているので、一部厳密には正確ではない表現もありますがご容赦ください。
Google AdSense
Google AdSenseというのはGoogleが提供している広告プラットフォームです。このブログにも設置しています。
ウェブサイト上に設置すると、閲覧者の興味のありそうな広告が自動で配信され、閲覧者がそれをクリックするとサイト運営者に収益が入る仕組みになっています。無料で導入できるというのもあり、広く普及しています。
Cookie(クッキー)
Cookieとは、ウェブサイトに紐づいたIDやパスワードなどの情報を保持するファイルです。
たとえばTwitter(twitter.com)にPCからアクセスする場合、初回はログインを行いますが、2回目以降はログインをせずともtwitter.comにアクセスしただけでログイン済みになっていると思います。あれもCookieが使われており、初回ログイン時にIDやパスワードなどをブラウザ側で記録しておき、次回以降はそのログイン情報を使って内部的にログインしているという仕組みになっています。
Cookieには様々な情報が保存されており、閲覧履歴や閲覧回数、ログイン情報やフォームの入力内容などを保存しておきます。あくまでPC内に保存される単純なテキストファイルなので、たとえば共用のPCなどでログイン情報を保存したままにすると、そのPCを他の誰かが使った時に実際にそのユーザーではないにも関わらずログインできてしまったり、ということが発生し得ます。
Cookieは個人情報を直接は収集していませんが、閲覧履歴などウェブサイトなどに提供しているので、ユーザーが任意で無効にすることもできます。
FPC(ファーストパーティークッキー)とTPC(サードパーティークッキー)
CookieにはFPC(ファーストパーティークッキー)とTPC(サードパーティークッキー)の2種類があります。
FPCとはウェブサイトと直接送受信するCookieのことで、TPCとはそれ以外と送受信するCookieです。
たとえば、このウェブサイト(boyi.sh)はコンテンツとしてテキストや画像、JavaScriptというプログラムなどを閲覧者に提供しています。このように、boyi.shから直接提供される時の通信をFPCといいます。それとは別に、Google AdSenseによって自動で配信される広告に含まれる画像やJavaScriptなどがあります。それらは、実際には広告主のサーバーやGoogleのサーバーから送られるものです。この通信をTPCといいます。
今回、GoogleはこのTPCを規制すると表明しました。TPCもユーザーの情報を取得して、それを(Googleを介して)他の広告主と相互に共有することにより、より閲覧者にパーソナライズされた広告を配信するという手法になっていました。しかし、プライバシー保護の観点からこのTPCの利用を制限すること表明しました。なお、あくまでTCPが扱っているのは個人情報そのものではなく、ユーザー像を推測する材料にすぎません1。あくまで閲覧履歴などのプライバシー保護ということです。
DF(DFPとも;デバイスフィンガープリント)
フィンガープリント(Fingerprint)とは指紋のこと。DFはどのデバイスで、どのブラウザで、どこから何時にどういうサイトを閲覧しているか、などの情報を元に実質的に指紋のようにユーザーを特定することです。
こちらに関してもプライバシー保護の観点から制限が入るとのことです。
TPC/DFに替わる技術
TPC/DFに替わり
一人ひとりの閲覧履歴をブラウザーに搭載した人工知能(AI)で解析し、似た趣味や嗜好を持つ数千人を同じグループにくくって広告の配信に活用する技術
というのを開発したそうです。これはFPC(ウェブサイトと直接やりとりするCookie)などを使用して、おおまかに「Aさんと同じサイトを見たBさんやCさんは、別にこういうサイトを見ている。Aさんもこういうことに興味があるのかも」と判断して広告配信をするということになります。
TPCを使わないのでそちらの面でのプライバシーは保護されることになります。
Google AdSenseはパーソナライズ広告の配信技術によって閲覧者にマッチした広告を提供していましたが、この方法だと必ずしも閲覧者にマッチした広告が配信されるようになるには時間がかかるかもしれません。
しかしAIを活用するということは、ユーザーのデータ集まり精度が上がれば、自分にマッチした広告が提供されやすくなるかもしれません。充分なデータが集まるのがいつになるかは分かりませんが、それさえできてしまえばあんまり変わらないか、むしろより精度が上がるかもしれません。
- 厳密には位置情報などは高い精度になっていると思いますが。 ↩