加害者はどれだけ尊重されるべきか

「『僕を殺しにくればいい』と彼は言った」“植物状態”の息子を介護して9年 被害家族が有名経営者・辻敬太氏にいま訴えたいこと

上記の一連の記事を読みました。#1が5ページ、#2が8ページ、#3が3ページあります。

こう書いてしまっては元も子もないですが、胸糞悪すぎて途中で読むのやめそうになりました。結局最後まで読んでしまいましたが…。

上記記事を読んで色々と考えさせられることがあったので、まとまりのない文章になるかもしれませんが、書いてみます。

以下の内容は私の考えであって、「これが正しい」とか「こうあるべきだ」という主張ではありません。また、かなりバイアスがかかっています。是非予め上記の一連の記事をご覧いただいた上で、以下の内容をご覧いただければと思います。

加害者はどれだけ尊重されるべきか

語弊があるかもしれませんが「事故の加害者になるなど、何かを失敗した人が他のことに挑戦してはいけないのか?」に対しては、個人的には「NO」だと思います。事故の加害者になったからといって、その人の人生で一切何かに挑戦してはいけないというのは違うかもしれません。

かといって「今は謝罪のタイミングじゃない」とか言って逃げたり、被害者の家族の方の感情を逆なでするような態度を取ったりということは違うと思います。

「加害者には加害者の人生がある」というのは、それはまさしくその通りです。ですが同様に、被害者にも被害者の人生があります。事故に遭って亡くなったり重い障害を負ったりすることがなければ、被害者の方の人生は遥かに良いものだったことでしょう。だから、加害者は被害者(やその家族)と向き合い、罪を償っていく必要があります。はっきりいって、その償いという行動に加害者が考える「僕のタイミング」とかないと思います。他人の人生をめちゃくちゃにしておいて自分の都合とかどうでもいいと思います。

加害者の人生は尊重されるべき、というのは嘘偽りなくその通りだと思います。ですが被害者家族からしてみれば、自分の息子の人生をめちゃくちゃにしておいて、自分は人生を楽しんでいると思われても仕方のないような言動だと思います。

インタビューでは

こうやって前向きな発言をし続けることが僕は社会貢献にもなると思いますし、今後の日本のため、若い世代のためにも役立つと思ってやっている
from 「『やっぱり教習所行こう』の投稿はすぐ消した」若手経営者・辻敬太氏が語った交通事故“被害者との諍い”の真実 6ページ目

と発言されていますが、だったら事故防止の講演セミナーとか、同様の被害者団体の寄付とかそういうことをされた方が良いのではないかと個人的には思います。若手起業家はたくさんいますが、人の人生を狂わせた加害者の立場で影響力のある人ならばそれにあった発信方法があると思います。

もし事故防止の講演とか寄付とかの活動をすれば、それが被害者・被害者家族への一連の償いではないとしても誠意のある行動ととられるのではないでしょうか。「若い世代に役立つ」と言ってはいますが、結局ビジネスですから償いより利益を優先しているととられても仕方ないことだと思います。少なくとも私はそういう印象を受けました。

「今は謝罪のタイミングではない」というのも悪意のある解釈をすれば「今はまだ稼げるから、今のうちに稼いで落ち着いてきたら謝罪しよう」というような意味に受け取れます。これは筋が通らないと個人的には思います。

加害者のタイミングで謝罪は虫が良すぎる

「今はタイミングじゃない」とか言って謝罪のタイミングを自分で決めているのはおかしいと思います。裁判で「一生償っていきます」と言ったのであればそうするべきです。それが誠意というものだと思います。

記事の#3でも言及されていますが、

『自分のタイミング』という主張で被害者を10年間待たせるのは理由として通りません。被害者のタイミングで謝罪しなければならないのに本末転倒です。
from 「『一生償う』を守らなければ不法行為の可能性も」弁護士が解説する交通事故・加害者と被害者の“その後” 3ページ目

という意見に私は同意します。被害者の方は一方的に人生を壊されました。事故の状況は詳しくは分かりませんし過失割合もわかりませんが、有罪判決が出ており加害者の方が突然人生を壊したとまでは言っていいと思います。そのうえ「謝罪は僕のタイミングで」とかふざけんなって思いますよ。自分の時間を最大限削って被害者や被害者家族に誠心誠意謝罪して償う意思を見せるべきでしょう。そのうえで加害者が自分の人生で挑戦したいことがあるのならすればいいと思います。優先順位が違うんですよ。これは書くか迷いましたが、でも書きますが、はっきり言って私が被害者家族だったら加害者の人生がどうなろうが知ったこっちゃないと思いますよ1

加害者はオンラインサロンでもかなりの収益を得ていらっしゃるとのことですが、個人的にはこういった人から何か学べることがあるのか疑問です2

「死にます」という話ではない

それから僕命いらないです、とも言いました。それが償いだとお父さんが思うなら、それが僕の最大限のケツの拭き方になるなら僕は死にますって。お父さんの手で殺したいのであれば、僕は目の前にすぐにでも行かせていただきます、って言いました。でも『そうじゃない』と言われて、『じゃあ何ですか?』と聞いたら『それは自分で考えろ』って。
from 「『やっぱり教習所行こう』の投稿はすぐ消した」若手経営者・辻敬太氏が語った交通事故“被害者との諍い”の真実 4ページ目

命いらないですとか死にますとか、そういう話ではなないんですよ。そんなことされたって何の解決にもならないです。もし仮に、加害者が死ぬことで被害者の方が元に戻るなら分かりませんが、そんなことしたって意味がないです。被害者家族が望んでいるのはそんなことじゃないです。なんでそれが分からないんですかね。

もちろんお金で解決できる話でもないです。ですが現在の制度上、実刑判決を受けたり被害に見合う賠償額を支払うという仕組みになっているだけです。だからって、イコール全部終わって謝罪が必要なくなるという意味ではないんですよね。

「それは自分で考えろ」という被害者家族の言葉は決して無理難題を言っている訳ではなく、自分で考えることによってもう一度事故や被害者と向き合ってほしいという気持ちの表れではないでしょうか。COVID-19の関係で直接の謝罪はできないにしても、ではそれ以前の数年はどうだったんだという話ですよ。結局加害者の方は自分の都合のいいように逃げ回っているだけにしか思えません。

被害者へのなりすましは結果的に被害者を傷つける

これは個人的には新たな気づきというか、考えてみればそりゃそうなんですが、この件で可視化されたので文章にしておきます。

被害者の方を装った悪戯のDMなどが加害者に寄せられていたそうです。

まず、これを送ってきたのが本当に母親かわかりませんでした。こういうDM、いくつも来てるんです。だから僕はこれをアンチとして対応してしまいました。
from 「『やっぱり教習所行こう』の投稿はすぐ消した」若手経営者・辻敬太氏が語った交通事故“被害者との諍い”の真実 5ページ目

被害者の家族の方から送られたDMに対してもアンチへの対応をしてしまい、結果的に被害者家族がより傷ついたとのことでした。

被害者を装ったDMを送った人の思惑は想像するしかないですが、恐らく「単純な興味本位」とか「正義感に駆られて加害者に接触したかった」とかだったりすると思います。ですが、そういったDMが相次いだことで被害者家族へも同様に対アンチの対応をするに至ったと…。正義感でDMを送った結果、一番守られるべき被害者側が傷つくことになってしまいました。

そもそもなぜ被害者家族が他の連絡手段ではなくDMを使ったかというと、被害者が苦しんでいるにも関わらずSNSで輝いている加害者をついつい見てしまい、その勢いでDMを送ったりしたのかな、などというのが考えられます。この気持ちはとても共感できます。たとえばミュートしているアカウントをついつい見に行ってしまったりとか、あるいはスマホの通知を切ったら却って気になってしまい集中できないというような感覚があります。

ですが個人的にはこの加害者の方の対応は不愉快です。「本当に被害者家族か分からないから乱暴に対応する」ではなく、「本当に被害者家族かもしれないから丁寧に対応する」とした方がいいんじゃないですかね?ほら運転も「かもしれない運転」って大事ですよね。「事故の件は申し訳ございませんでした。大変失礼ですが、本人確認をさせてください。今は新型コロナもありますので、電話かビデオ通話にて謝罪させていただき、落ち着いたら改めて謝罪に向かわせていただきます」とかにしとけば、少なくとも「マジで誰や 名前言え」よりは被害者家族が傷つくこともなかったと思います。

その他

上記は特に気になったポイントですが、それ以外にも「そりゃ申し訳ないと思ってますよ。そんなの当たり前じゃないですか」「僕が保険会社に『全部払え』ってブチ切れたからです」「世間の大概の人は僕の言うことが一番信憑性があっちゃうっていう」など、そもそも本当に反省しているのか?と思えるような発言が随所に登場します。

上記の発言は部分的な引用(キリトリ)なので、ぜひ冒頭に紹介した一連の記事をご覧ください。

個人的にはもうこの加害者の方は謝罪するタイミングを失ったと思っています。9年間謝罪していないなんて言語道断です。被害者やその周りの方を思うととても悲しい気持ちになりました。


  1. 今回の被害者の方がそのように思っていらっしゃるかは分かりません。 
  2. 私の想像に及ばない価値観や評価軸があり、何かを学べると判断してメンバーになっていらっしゃるのだと思いますし、それは否定しません。そもそも加入時には事故の件はご存知なかったかもしれません。