【夢日記】海獣を逃がす夢

海獣を逃がす夢

私は政府機関で働いていた。職務内容は海獣のお世話。広大な面積の天然プールのようなところで飼育していた。名前は付けるなと上司に言われていたが、ひそかに「メルティ」という名前をつけていた。首が長く、背中には亀の甲羅のようなものを背負っている。見た目はポケモンのラプラスにそっくりだった。

メルティは実在性が証明された神だった。一般人はその存在を知らないが、各国がメルティのことを狙っている。海獣がいる国は海洋資源が豊かになると何百年も前から語り継がれていた。確認されている海獣はメルティの一個体のみで、気まぐれに各国を点々としながら旅を続けている。海獣を怒らせたら国家崩壊の恐れさえあるため、各国は丁寧に扱った。メルティは数十年前、まだ昭和だった時代に日本に来てから日本のことが気に入ったらしく、以後長い間日本に留まっている。各国はメルティが日本にだけ留まっていることを不公平に思い、強奪しようと目論んでいる。だからメルティは最重要機密とされ、私を含む関係者以外はどこにメルティがいるかも知らない。政府関係者でも他の機関に所属している者には総理大臣にさえメルティの所在は知らされていなかった。

困ったことにメルティは度々私たちから逃げ出していた。メルティは子どもが好きで、河などを伝ってよく子どもに会いに行っていた。そのたびに私はメルティを探すために日本中を探し回らなければならない。だいたい、メルティが訪れた地域は漁獲量などが急増するのでそのデータをもとにメルティを探しに行く。そうやって見つけるたびにメルティを説得して元の場所へと一緒に帰ることになっていた。メルティは人間の言葉は喋れないが人間が言っていることは理解できるらしかった。

ある日、メルティのプールへ向かうとまた脱走していた。さっそく追跡をすると、なんとトライアスロンの遠泳をする海へ行っているらしかった。そのトライアスロンは小中学生が参加していて、きっと子どもたちに会いに行ったのだろう。しかしトライアスロンの模様は生中継されている。もしメルティの姿がカメラに映りでもしたら最悪で、各国の諜報員が活動を開始することになるだろう。

私がメルティを追って遠泳の海へ行くと、ちょうど溺れている参加者がいた。中継でもクローズアップされていた。ライフセーバーが救助のために海へ飛び込んだその時、メルティがその溺れた子を背中に載せて浮上した。メルティはその子をライフセーバーが乗っているボートへと運ぶと、深く潜ってしまった。もちろんメルティの姿はバッチリと生中継され世界中が「ついにネッシーがカメラに!?」「いやいや、あれは日本の救助ロボットだ」などとパニックになった。

私はメルティの飼育員として責任を問われたが、上司は「海獣は悪戯好き気まぐれで、主に子どもに会うために何百回・何千回と度々脱走していた。その度秘密裏に連れ戻してきたのは彼(私のこと)だ。今回の件を理由に処分するには値しない」と庇ってくれた。私はお咎めなしとなったが、代わりにメルティを連れ戻すことになった。また、メルティの飼育場所を移すためにその手配も行うことになった。

メルティ自身も今回のパニックに困惑しているらしく、普段は行かないようなドブ側や小さい川などを転々としていた。私はなんとかメルティを探し出し、一緒に帰るように伝えた。するとその時初めてメルティの心の声がテレパシーのようなもので伝わって来た。メルティは「人間の管理下から離れたい。何にも縛られず、好きなことをして自由に生きたい。今後は日本を離れるかもしれないし、まだ日本に留まるかもしれない。それは僕にもどうするか分からない。もし僕を見つけても、今後はそっとしておいてほしい。今までありがとう」と私に伝えた。私はそれを了承した。国家機関で働く人間の立場からすると決して了承してはいけなかったが、何より長くを共に暮らした友だちの頼みを断るわけにはいかなかった。

上司にメルティが私の管理下を離れたことを伝えると、上司は「そうか」とだけ言って頷いた。翌日政府から私に下された命令は、メルティの射殺だった。麻酔銃とライフルのようなものを渡された。

私はメルティを探しに行く振りをして、そっとそれを海に投げ捨てた。そして、「海獣を射殺しました。海獣は光の粒になって消えてしまいました」と報告した。政府から各国政府機関へ、海獣が偶発的な事故で消えたと報じられた。

メルティはまだきっとどこかの海で元気で暮らしている。

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