「編集者からのお願い」は適切か

執筆者やライターに向けて、編集者からのお願い→原稿を書き終わったらチェックして欲しい点がこちら
「それはあなたの仕事では」Twitterでバズった【編集者からのお願い】に対するライターや編集者らの反応(の一部)

上記2つのまとめを読みました。

発端となった編集者の方のツイートは削除済みであり、誤解を招いたこと等謝罪をされています。

なので今更蒸し返すこともないと思いましたが、私のブログなどの文章におけるポリシーを書けるなと思ったので書いてみます。

発端のツイートは以下の内容だそうです。

【編集者からのお願い】
著者やライターさんへ、原稿が完成したら、

・「という」をカット
・「と思います」をカット
・「こと」をカット
・「もの」をカット
・過剰敬語をカット

できないか見直していただけないでしょうか。ざっとでもかまいません。関係者全員が幸せになります。なにとぞ、、!

上記の他にも色々と続きますが、詳しくは冒頭で紹介したまとめをご覧いただくとして、「なるほど」と思う箇所もあれば「えぇ~?これはどうなん・・・?」と思う箇所もあります。雑感として書いていこうと思います。

ちなみに、発端となったツイートや編集者さんを貶すという意図はないつもりです。

「という」「こと」「もの」

このあたりは、おそらく文章が必要以上に冗長になるのでカットすべしと書かれているのだと思います。これに関しては同意しますし、わが身を見ても反省するところがあります。どうしても必要な場合もありますが、なくても成立するならない方が読みやすいと思います。

「と思います」

事実と個人の意見は分けるべきだと思います。事実はしっかりと断定して、そうでない部分には「想像ですが」「個人的には」「と思います」「と推測します」「かもしれません」などと出来る限り付ける、あるいは文脈からそう判断できるように心がけているつもりです。

一方、「と思います」が悪用されているようなケースも思いつきます。専門家の肩書などを添えて「~と思います」と書かれていると「これは事実じゃないけど専門家の意見だから正しいだろう」と判断することがあるかもしれません。これが本当に推測なら良いのですが、あからさまなデマを専門家の肩書を利用して、また断定を避けることで責任回避して広めているようなケースもあると思われます。個人的には発言者よりも発言内容の方が大事と思っていますが、常にそう判断できている自信はありません。専門家の意見なら間違いないと思うようなケースもありますし、少なくとも素人の意見と専門家の意見であれば専門家の意見の方が信憑性を感じるでしょう。

この辺りは受け手のリテラシーの問題も関わってきますが、それにしても『「と思います」をカット』というのは極論な気がします。

過剰敬語をカット

過剰敬語はそう知っている人からしたら違和感があると思います。たとえば「拝見させていただきます」は二重敬語の例としてよく挙がると思います。拝見は見るの遜った表現(謙譲語)で、「見せていただく」といった意味です。なので「拝見させていただきます=見せていただかせていただきます」みたいな表現となり違和感があります。どうしても「いただく」のような表現にしたいならば「見せていただく」でいいんですよね。でもこれって知らなかったら違和感ないですよね。

ただ、編集の方の立場からすると掲載しているメディアのポリシーなどもあるでしょうし、「ここの編集者はこんなことも校正できないのか」などと偏屈なことを言う読者もいらっしゃるかもしれないですし、まぁ本来正しい日本語を使ってほしいんだろうなぁと想像します。

あと関係ないですがついでに書くと、たまに「拝見してください」「召し上がってください」みたいな表現を見ますが、それらは謙譲語(自分の立場を下げることで相手の立場を相対的に上げる言葉)なので誤用となります。正しくは「ご覧になってください」「お食べになってください」ですね。謙譲語の主語は自分サイドじゃないとめちゃくちゃ失礼に思われるかもしれません。私はそんなこと言われてもいちいち気にしませんが。

それが編集の仕事なのでは?

上記のようなことは「編集からライターへのお願い」となっていましたが、それに対して多方面から「それが編集の仕事では?」とツッコミが入っています。個人的には、ライターは表記ゆれとか細かいことに意識使うより、書く作業に集中してもらった方が良いのではと思います。

ただ、「それが編集の仕事では?」というのはちょっと違うというか、違う訳ではないですがそもそも編集がするより自動化して方が良いのでは?と思うんですよね。

編集者の仕事って多分

  • 校正(誤字脱字、表記ゆれなどのチェック)
  • 校閲(事実確認、事実と違う表現の修正)
  • 推敲(内容のブラッシュアップ、レイアウト調整など)

あたりだと思うんですけど1、このうち校正の作業ってツールでほとんどできると思うのでできるだけ自動化して校閲とか推敲をやってほしいなって思うんですよね。いや編集者さんが付くような記事書いたことないんですけど。

私は仕事でも趣味でもプログラミングをしていますが、スタイルの整形とかはほとんどツールに任せています。その分、「本当に人間が頭を使ってやらなければならないこと」に集中できます。日本語の現行はツールでどの程度できるかわかりませんが、たとえば最近のテキストエディタにも校正ツールを入れることもできますし、それらを併用すれば校正にかかる工数を減らせるとまでは言えると思います。

一方事実確認とか推敲とかは自動化が難しく、人が目や手を動かしてすべき作業と思うので、そっちに時間を使った方が良いと思います。

ということで「それが編集の仕事」と言うのも違うとは思いますが、少なくともライターがやること(その作業に対して、編集者の工数以上に工数を使うこと)だとは思えないです。


  1. 編集者だったこともないし知り合いにもいないので想像で書いてます。