【小ネタ】2KとかフルHD+、解像度と画面解像度

小ネタです。

4Kテレビの「K」って何なのよ

4Kって言葉があるじゃないですか。4Kテレビとか4Kモニターとか、割と馴染みのある言葉だと思います。これは画面解像度(後述します)の規格で、3840×2160pxのことを「4K」と呼びましょう、と決められています。「K」とは1000を表す接頭辞で、1000mを1kmとか、1000gを1kgとか言ったりするあのKと同じ使い方です。同じ使い方ですが「ヨンキロテレビ」とは言わず「ヨンケーテレビ」と言います。ヨンキロテレビってなんか強そうですね。

4Kというのは、横方向のpx(ピクセル)数が4000pxだから4Kといいます。テレビやモニターなどは960px=1Kとして扱います。なぜ1000ではなく960を1Kと扱うかというと、これはまぁ説明が面倒くさいのですが、せっかくなので書いてみます。興味なかったら読み飛ばしてください。

近年のテレビやモニターでは、一般的に縦横比が16:9となっています(正確に書くと横16に対して縦9なので、横縦比が16:9。以下横縦比で記載します)ですが、その昔は4:3が主流でした。テレビと同じく、映画も4:3の比率で作られていました。なぜ4:3だったのかというと、エジソンがそう決めたからです。

しかしそれだとテレビと映画の比率が同じで映画が魅力的にならないと考えた映画業界は、色々な横縦比の映画を作り始めます。どんどん横に長くなっていきました。

そして映画をテレビで放送するようになったら、映画のサイズがバラバラなので、テレビの4:3に映すと縦だったり横だったりに空白(レターボックス)が出るようになります。たとえば、横に長い映画をテレビに映したら、上下に黒い余白が出ます。これはまずいと考えたテレビ業界は、テレビの横縦比を変えました。その時、色々な映画のサイズに応じてテレビを作る訳にはいきませんから、「どの横縦比の映画でもある程度余白が出ないで放送できる丁度いい横縦比」を考えました。その時の映画の横縦比は4:3のものから2.35:1のものまであり、テレビの丁度いい比率が16:9と定められました。

さて、先ほど1K=1000と説明しましたが、1000は16の倍数ではないため、1000に近い16の倍数として960を1Kとして扱うことになりました。976や992も1000に近い16の倍数ですが、スケーリング(画面の拡大や縮小)をした時に端数が出ないように、1の位が0である960が採用されました。横が960pxの場合、16:9だと縦は540pxとなり、丁度いい訳ですね。これだと画面を1.5倍に引き伸ばしても2倍に引き伸ばしたとしても、あるいは半分に縮小したとしても端数(小数部)が出ません。ちょうどいい数字だった訳ですな。これで、1K=960:540pxと定められました。

ちなみに、現在の映画の4Kは4096:2160pxです。横縦比が約1.9:1なので、これらを16:9のテレビやモニターで見ると上下にレターボックスが出ます。

2KはフルHDのこと

で、2Kなのですが、2Kとは1K=960:540の倍なので1920:1080pxのことです。この横1920px、縦1080pxというのはフルHDという呼ばれ方をしています。つまり、2K=フルHDのことです。

で済めばよかったのですが、なんかややこしいことになっています。

画面解像度の呼び方にはWQHD(ワイドクアッドHD)という規格があり、これは横2560px、縦1440pxのことです。で、こでが問題なのですが、2560px=約2000ということで、2K=WQHDのように説明しているサイトがあるのですよ。具体的に名前は出しませんが。

上記の歴史的経緯からすると2K=フルHD=1920:1080なのですよね。中には2K=WQHDであり、フルHD=1Kと思ってた、みたいな人もいらっしゃるようです。4KはフルHDの4倍のピクセル数だから、フルHDは1Kと思っていた、とのこと。√4が1になるというワンダーな世界ですね。正しくは、フルHDが縦に2倍、横に2倍になっているから2×2で4倍になっているだけなんです。

と、2K=WQHDという誤った認識が残念ながら浸透してしまったので、2Kの話をしていてもフルHDのことを言っているのかWQHDのことを言っているのか分からなくなっており、とても困っています。会社での何気ない会話中に「そろそろモニター買いたいんですけどね~」「俺この間買ったよ、2Kのだけど」「その2KというのはフルHDの事ですか?」などと話すでしょう、したら「当たり前じゃん何言ってるの?頭大丈夫?お前しょっちゅうモニターが~、解像度が~、みたいな話するくせにそんなのも分らんの?素人は黙っとれーー」みたいな目を向けられます。つらたにえんぴえんぱおん。

まぁそれだけなら別にいいのですが、たまにWQHDのモニターを買うつもりで家電量販店に相談して2Kモニターを探してもらったら、オススメされて買ったのがフルHDだった、みたいなこともあるみたいです。

個人的には2KよりもフルHDと言った方がしっくり来るので、2Kという言葉は廃れていただくか、2K=フルHDであると正しく認識していただきたく思います。

フルHD+のカオスさ

で、個人的にもう一つ気になる用語があり、それがフルHD+です。FHD+と書いたりもします。

フルHD+とはそのまんま、フルHDよりピクセル数が少し多いよ!という意味です。1920:1080より少しだけ多いよ、ということですね。

では、以下のページを「FHD+」で検索してみてください!

画面解像度|Wikipedia

どうです?「FHD+」だらけでしょう。カオスでしょう。フルHD+は明確にピクセル数(横縦比)が定められていません。なので各社各人が、「フルHDよりピクセル数が多い」という意味でフルHD+を勝手に定義して使っています。なので、メーカーのサイトで「フルHD+」とだけ書かれていても、具体的に縦横それぞれ何pxか全然わかりません。バラバラなんだもの。

こういうの本当に困っていて、たとえばLG V60 ThinQ 5G L-51Aをポチったという記事で紹介した「LG V60 ThinQ 5G L-51A」という2画面スマホの、docomoの紹介ページでも、「FHD+」とだけ書かれており具体的なピクセル数が書いてなかったので大変イライラしました。

LG V60 ThinQ 5G L-51A|docomo

スマホを製造している訳ではないとはいえ大手キャリアがフルHD+のピクセル数のカオスさを知らないとは思えない(思いたくない)のですが、なんでこんな雑な説明をしているのでしょうか。理解に苦しみます。ちなみに上記スマホの画面解像度は2460×1080です。

フルHD+と安易に表示するのはやめて、ピクセル数を書くか、せめて「FHD+(2460×1080)」と併記していただきたい。なぜなら「FHD+」とだけ書かれていても、「フルHDよりはあるんだな」というところまでしか分からないので…。

解像度と画面解像度の違い

よく、「4Kテレビは解像度が高いので映像がきれいです」みたいなことが書いてありますが、正確に言うと、4Kだから解像度が高いと言い切ることはできません。

解像度の単位はdpiまたはppiを使います1。それぞれドット・パー・インチあるいはピクセル・パー・インチの略で、1インチあたりドットやピクセルがどれくらいあるか、ということです。4KやフルHDというのはあくまでピクセル数なので、実際の画面のインチ数が分からなければ解像度は出せません。

例えるなら、算数の問題で「たかし君は10km歩くのに何時間かかるでしょう?」と聞かれても、時速が提示されていなければ求められないですよね?それと同じです。インチ数が分からなければ解像度が高いか低いかは分かりません(感覚的に、4Kだからキレイそうとは言えると思いますが)。4KやフルHDなどのピクセル数を、解像度ではなく画面解像度と言ったりしますが、よくごっちゃになっている人や記事を見かけます。

では例えば、24インチ・フルHDのモニターの解像度(ppi)はどのくらいなのでしょうか。計算してみましょう。

解像度は次の式を使って求めることができます。

計算した結果、24インチ・フルHDのモニターの解像度は約92ppiでした。

では24インチ・4Kのモニターも同様に計算してみましょう。同様に計算すると、約184ppiとなりますね。縦横のピクセル数が2倍になってインチ数が同じなので、解像度が2倍になっている、という訳ですね。

で、この24インチ・4Kモニターの184ppiという解像度ですが、紙の印刷物と比べるとそんなに高くないですね。例えば新聞の新聞広告原稿制作ガイド2020(※pdf注意)には、

新聞印刷に必要な画像解像度は、カラー/モノクロともに300~400 dpi です。

とありますね。それに比べれば184ppiというのはかなり粗いと言えるかもしれません。実際肉眼で違いで分かるレベルではないと思いますが…。

なお4Kを24インチとかで見ようものなら文字はかなり小さくなります。こういう場合は、PCであればスケーリングすると良いと思います。その場合4Kの解像度をフルに活かすことは出来ませんが、文字がくっきり見やすくなるなどメリットもあります。

また、画面サイズを物理的に大きいものにするという手もあります。30~40インチなどの大きなモニターを使えば肉眼でも見やすくなると思います。ただし、上記式にもあるとおり画面サイズは分母になっていますので、大きくなれば解像度は下がります。また、画面が大きくなると視線の移動だけでなく実際に首を使って視線移動をしなければならないため、疲れやすくなるかもしれません。

ちなみにですが、上記の「LG V60 ThinQ 5G L-51A」は2460×1080ピクセルで6.8インチなので、解像度はなんと395ppiもあります。紙の本くらいのレベルです。すごい…!皆さんのお手持ちのスマホでも、是非計算してみてください。

余談

ちなみに、画面のサイズと縦横比が分かれば、大きさも求めることができます。モニターなどのインチというのは対角線の長さのことを言っており、1インチは2.54cmです。

縦・横に対する対角線の長さは三平方の定理を使い(覚えてますか…!)、以下の式で求めることができます。

手っ取り早くお手元のExcelで

=SQRT(9^2 + 16^2)

と入れてみてください。縦:横:対角線の比率は9:16:約18.36と求めることができます。1インチは2.54cmなので、各比率に「インチ数÷対角線の比率」を掛ければ、各辺が何インチかを求めることができます。そしてインチ数が分かれば何cmかを求めることができます。この比率を元にすると、縦が約29cm、横が約53cmと計算できますね。実際にはそれに加えてベゼルの幅などが入ってきますが、大まかな幅は実物がなくても計算可能という訳です。


  1. dpiというのは印刷物などで、ppiはモニターなどで使わる単位です。