【夢日記】祖母が一人暮らしをする夢

祖母が一人暮らしをする夢

なんとも後味の悪い夢だったが書いてみる。

私は実家にいる。祖母がソファでくつろいでいるが、母は忙しそうにしている。なにやら祖母の服や私物なんかをまとめているらしい。事情を尋ねると、なんと祖母が一人暮らしをするという。祖母はもう90を過ぎて足腰は弱っている。それに加え最近はボケて来ており、私の顔を見て叔父の名を呼ぶなどを繰り返す状態だ。とてもじゃないが一人暮らしをできるような状態とは思えない。

「一人暮らしって言ってもすぐそこだし、私も月一回くらいは様子を見に行くから心配せんでよかよ」と母が言う。しかし私は内心、これは所謂姥捨てなのだと確信していた。月一回くらいは祖母を訪ねるという発言も真っ赤な嘘でありそんなつもりはないということも私は何故か見抜いていた。そして私がそれを見抜いていることを母親が気づいている、ということも私は知っていた。

「なんでまた突然一人暮らし?」と尋ねると、どうも、ある基準を満たした老人を特定の地域に集めて、それぞれ一人暮らしをしながらも老人のコミュニティを構築してもらおうという、市の方針のようだ。これ自体も何かしらの思惑があるのだと勘ぐったが、そういうことならまぁ…と納得してしまっていた。

祖母はというとどこか楽しみなようで、駄菓子屋のキヨちゃんの隣の家になったと嬉しそうに話してくれた。駄菓子屋のキヨちゃんというのは実在はしないが、夢の中ではそういう人がいたことを知っていた。小学生の時に寄り道をしていたら先生が見回りに来たので、私たちを奥に通して匿ってくれた優しいおばあちゃんだった。もう久しく会っていないが、そういえば祖母とは仲が良かったと聞いたことがある。夢の中でそういう記憶があった。

しかし祖母は祖母で、自分は厄介だから家族の元から離されるんだということを知っている。そして、知っているということを家族に悟られまいと、あえて明るく振舞っている。ということを私は知っていた。

やがて準備が終わり、祖母を見送ることになった。玄関までは母が付き添って介助しているものの、靴を履いて玄関を出る頃には母は添えていた腕を離してしまった。そして祖母に向かって「ならね1」とだけ声を掛けた。

母も祖母もいつの間にか大粒の涙を流している。まるで今生の別れと互いに知っているようだった。というかそうなんだけど。事実、きっともう会うことはできないのだろう。直接言ってこそいないが、暗黙の了解で互いにそれを知ってはいる。月に一度様子を見に行くとか、一人暮らしが楽しみだとか、そういうのはあくまで建前だ。でもその建前を、お互いが何より尊重していた。あの涙はきっと色々な感情が溢れてこぼれ出たものに違いない。

玄関を出ると、祖母はふらつきながらも杖をついて進んでいった。母は介助には行かない。私も、普段なら祖母がよろついていると咄嗟に支えに行くが、その時は木のように動かなかった。きっと玄関を出たら関わってはいけないのだろう。祖母は一昨々年に転んで骨折したので、介助に行かないハズがないのだ。でも誰も行かなかった。もう祖母には会えないのかと考えると、なんだかなんとも言えない気持ちになった。


  1. 「じゃあね」くらいの比較的フランクな別れの挨拶。熊本弁。博多弁かも。 

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